今日はお天気にも恵まれて賑わう時間帯もありましたが、どちらかと言えば静かな一日だったかもしれません。
それでも昨日のブログ記事を見て木目込み雛人形を選んでくださった新しいお客様がいまして、採り上げた側として嬉しく思うところがありました。
そして店のバッグヤードでは発行が遅れている情報紙「あ・うん」の12月号を必死になって構成していまして、仕事中は休みなく何かを考えながら自分で自分の背中を押すことが癖になっているようです。
パソコンの画像の先にはこの言葉のカレンダーが下げてありまして、今日13日は、
『道行く人はみなお得意様』の言葉が・・・
補足する言葉には、
直接買っていただいた人だけがお得意様ではない。
道ですれ違う人の中には、すでに商品をお使いいただいている人もあれば、明日買ってくださる方もいる。
大きな目で見ればお得意様である。いつ、誰に対しても、感謝と謙虚な心を忘れてはならない。
商売の神様と言われている松下幸之助さんが残した言葉ですが、私は少し見方が変わっていまして、着物離れと言われたりする時代に、私が勝手に着物を欲している人を選んでいて、万人が欲しがるものではないと決めつけているところがありましてね~
そうした考えが底辺にあるから心が狭くなってしまって、振り向かない人に振り向かせたいという熱い想いが欠けてしまっているのでしょう。
店があって、見立てのいいセンスと身持ち良い関係性が持てるサービスが提供できれば、道行く人をお客様にすることは「ゼロ」ではありません。
仮に道行く人がみなお得意様だったら、日替わりでウィンドーを替えていたかもしれないし、路上に立って道行く人に積極的に店のPRをしていたかもしれません。
店を持つということは、そんな気構えで仕事と向き合うことが必要であることを説いているように思えてならないのです。
ここまで記事を書き終えた閉店前の事でした。
一人の女性が長方形の厚みのある箱を持って来店されましてね~
新規のお客様でご用件をお尋ねすると、目の前に置いた箱のふたを開けて、
「この紫の草履と似た色の草履がないでしょうか?」と問いかけられましてね~
お越しになられたお客様が成人式にお使いになられたもので、深い紫系の草履と巾着がセットになったものでした。
見ると草履が潮を吹いたかのように白いカビが全体に広がっていて、少し劣化も始めっているのか、履ける状態のものではありませんでした。
しかし、店内によく似た色合いの草履がなくて、草履台の革の見本帳が手元にあったもので、それを見ると、よく似た色があったので、これで誂えることが最もベターな選択であることを提案すると、お客様は、二日後に前撮りをするというのです。
2020年の1月の成人式だと思ってお話をさせていただいていことが、二日後のことだと分かり、さて、どうしたものか?
詳しくお話を聞かせていただくと、お嬢様は県外から前撮りをするために戻っていらっしゃるそうで、身長は152㎝で足のサイズは24㎝。
着物一式は美容院に持ち込まれていて着物は紫の無地の振袖とのことでした。
コーディネートに少し問題があるように感じていましたが、その事よりも二日後の前撮りをどうするかです。
お客様も困り果てていまして、その時、頭をよぎったのは長女が使った振袖用の草履とバッグをお貸しすることでした。
でも今日が初対面。
それも10分前に出会った人です。
お名前もお住いも知らなければ、草履とバッグを取り扱う店が商品を販売しないで、娘の草履とバッグをお貸しするということに違和感がありました。
お客様は困っていらっしゃる。
心の格闘がありましたが、道行く人はみなお得意様だとしたら私には納得できる話です。
これも何かのご縁でしょう。
娘の草履をお貸しするので、前撮りが終った後でどうするかを考えてみましょう。
お客様は驚いた顔をされていまして、お嬢様に確認を取らなくていいのですか?
お借りする料金を言って下さい!
そのような押し問答がありましたが、お名前とご住所、そしてお電話番号をメモ用紙に書いていただいて、娘が使った草履とバッグが入った箱を風呂敷に包んで手渡した次第です。
お客様を送り出してから、どうしてそんな行動を取ったのかと思い返すと、ブログ記事に書いていたことが頭に残っていたからかもしれません。
不思議なご縁を感じてなりませんが、お役に立つことができて本当に良かったです。
前撮りが終った後に返しに来ると話されていましたが、その時に着物一式もお持ちになられるみたいで、そこで初めて専門店の目線でアドバイスができるかと思っています。
今日は他の話題も用意していましたが、記事が長くなってしまったのでこれで終わることと致します。
ではお休みなさい。