長年この仕事と関わって来て、着物の着こなしに無駄を省こうとされるお客様が少なくないことを感じています。
例えば、木枯らしが吹く寒い時に、着物コーディネートのご相談をいただいた時、「コートがあった方がよろしいのではないでしょうか?」と、アドバイスをさせていただくと、「車で移動するから必要ではないわ!」と、おしゃられたり、例えば、「カジュアルの装いにフォーマル草履は可笑しいですよ・・・」、お伝えしても「少しの時間だからこれでいいのよ・・・」と、着物を着る機会が少ないことを理由に、新しいものを揃えたがらないケースが私の立場から見ると、無駄を省こうとする行為に思えてなりません。
これは一つの例えですが、お客様の立場からすれば現在タンスにあるもので着こなしたい。または、着物を着ることが少ないから必要なことが分かっていても買い物を控えたいと考えるのは理解できないわけではありませんが、そこには気持ちのいい着こなしとは距離があって、我慢をして着物を着ることかと思えたりもします。
仮に何も知らずに恥ずかしい経験をしたとしやら、着物への憧れは薄れるでしょうし、そでなくても、面倒なTPOが着物を遠ざける切っ掛けになっているとしたら、業界としてはとても悲しいものがあります。
そのことを一言付け加えて今日の記事に入りたいと思います。
今日も暑い日になりましたが、この先、真夏日や猛暑日が続くと、着物を着る場があっても洋服にしたいと思うものですが、夏には夏用の和装の小物があることをご存知でしょうか?
涼しさと汗対策を考えて作られているもので、それらの小物を紹介してみたいと思います。
題して「暑さ対策の小物たち」です。
これは長襦袢の衿に通す衿芯というものですが、近年は浴衣の衿に通される方もいらっしゃるようです。
上が一般的な作りのもので、下が通気性を良くするために作られたメッシュ衿芯です。蒸れることがないので暑い日に活用されてみてはいかがでしょうか?
こちらは帯板ですが、帯を締める部分が最も汗をかく個所だけに、下のメッシュの帯板を夏の時期に使われると、少しでも暑さを軽減できるのではないでしょうか?
上は可愛い水玉の帯板ではありますが、通気性とは無縁の品でこのような帯板を使うとかえって体熱をため込むように思います。
メッシュ帯板には腰ベルトが付いていないものもあるので参考にされてみてください。
帯枕にも夏対策の品があります。
下の麻枕が夏向きで、本体の表生地には麻を30%使っていて、本体の芯には麻を70%使用した品になります。
こちらは博多織の伊達締めで、伊達締めにもさまさまな商品がありますが、夏の対応した伊達締めが極めて少ないために博多織の品で比較してみました。
画像を見てお判りのように下がメッシュ織の紗の伊達締めです。
下に紙を敷かせていただきましたが、透けるような風合いは通気性を高めるものになっています。
さて、ここからが地肌に触れる肌着となります。
この画像は和装ブラを映したもので、右側が通気性と汗取りを考えて作られて品になります。
和装ブラは胸の膨らみを抑えるために作られたもので、洋装のブラとは性格の違うものです。
例えが合っているかわかりませんが、着物は昆布巻きのような棒状の体型に合うように仕立てられたもので、真上から人間の立ち姿を見た時、バストやヒップが出ていない方が着付けが綺麗にできるんですね~
従って胸を和装ブラで抑え、ウエストに補正のタオルなどを入れて、棒状の体に近づくように整えるのが着付けのコツといえます。
和装ブラは肌に触れる面積が広いだけに、合成繊維の使用量が多いと暑い日には汗を引き起こすだけでなく、汗を吸い取りにくいのではないでしょうか?
そこで紹介する品は綿65%、ポリ35%のメッシュ仕立てになっていて、画像からも涼感が見て取れるかと思います。
サイズはM(バスト79~87㎝) L(86~94㎝) LL(93~101㎝)の3サイズを用意しております。
そしてこちらがワンピースタイプの和装肌着になります。
右側が清涼感のあるクレープすべて綿素材になっているものです。
一方左柄が一般的な品で見頃が綿で裾がポリとなった素材のものです。
通気性、汗の吸収性からもクレープ素材の方が夏場に適しているものですが、お勧めしてもご理解がいただけないのが実情です。
そして汗っかきの人にはこちらの麻素材のステテコをお勧めしたいですね~
私も暑くなるとこのステテコを愛用していますが、ズボンの巾が30㎝近くあり身に付けると裾除けをしているかのようで、股の汗を防ぐものになりますし、動きやすいのも特徴かと思っています。
素材が麻であることからサラサラ感がとても気持ちいいもので、洗濯機で洗っても縮まず、普通に干していただけるだけで世話のかからないステテコです。
最後に夏の半衿ですが、正絹や麻素材のものは素肌に優しいところがあって、以前ポリエステル素材の半衿を使って着物を着たことがありますが、気持ち良さは正絹の半衿が勝っていました。
コストは高くつきますが、汗ばむときだけに正絹の半衿を使われることをお勧めしたいですね。
画像は趣味性の高い竪絽をアップしていますが、普通は横絽の半衿が一般的です。
他に麻足袋があることも一言付け加え、夏向きの小物を紹介させていただきましたが、これ他の品を使うことで着た感じが随分変わることでしょう。
暑さが増してくると着物がけん制されがちな昨今だけに、着物や帯のセールスに留め、このような小物があることを積極的に伝えてこなかったことがあります。
なのでこの記事を読まれて知らなかったと思っていらっしゃる方も少なくないかと思いますが、その裏柄には着物ってお金が掛かるものだと思われたくない気持ちがありましてね~
弱い立場にいる訳ですが、機会があれば紹介してみたいと思って特集した次第です。
他にもさまざまな暑さ対策を考えた小物が市場に存在していますが、暑さを我慢するか、涼しさを優先するかは、お一人お一人の考え方かと思っています。
と言いながらも、気持ちよく着物を着たいのが正直な気持ちではないでしょうか?
何か一つでも採りいれていただけたなら幸せに思います。
どうにかまとまることができてホットしました。
それではこれにて・・・
お休みなさい。