石川県の婚礼支度・三幅羽二重花嫁のれんに中包みと日の出に鶴亀の加賀袱紗

石川県の文化・花嫁の婚礼道具 着物の再生/リフォーム

能登半島地震の影響もあるのか、着物を着る機会が少なくなっているのかもしれません。

着物や長襦袢を丸洗いして欲しいとの相談が少ない感じがしますが、活用の場を失ってタンスに眠る着物の寸法直しや着物の染替えであったり、着物を新たな形に作り替えたいとの相談が増えています。

 

中でのこの月にママ振りの縫い直しの相談が二組あって、他にもママ振りに合せる草履やバッグの相談をいただいたりして、お客様が持っていらっしゃる資源を有効に活かしたいと考えられる人が増えているのかもしれません。

 

地方の呉服店さんの場合、着物を販売する小売業から、着物の洗いやシミ抜きであったり、仕立て直しや半衿の取付け、更には入学式や成人式などに一人で着物が着られない人の着付け相談を受けたりして、サービス業としての役割が喃々増えいる感じがします。

 

地域の人達のお役に立てる仕事ができているのだから、それでいいと言いたいところですが、新しい商品が売れていかないということは、いずれ着物産地が枯れていくことにもなりかねないので、何か対策を講じないといけないと思っています。

 

そのような折りに、母の遺品を整理していたら、このような物が出てきたのでシミ抜きをしてもらいないかとの相談をいただきましてね~

 

 

 

【お母様の遺品から見つけ出した花嫁のれんと中包み】

 

 

 

 

石川県の文化・花嫁の婚礼道具

石川県の文化・花嫁の婚礼道具

 

それがこの画像になる、かつて花嫁さんの嫁入り道具として準備された「花嫁のれん」と赤飯が入ったお重を包む「中包み」だったんですね~

 

そても状態がよくて、描かれている模様がとても素敵だったので、お客様に確認を取って写真を撮らせていただきました。

 

 

【牡丹の花嫁のれん】

 

 

 

花嫁のれん(羽二重三幅のれん) 牡丹の柄

花嫁のれん(羽二重三幅のれん) 牡丹の柄

 

シミ抜きを依頼されたのはこちらの花嫁のれんで、中央に大きな家紋を入れて加賀友禅で染めていたように記憶していますが、その多くが三幅の羽二重で作っていました。

 

半世紀近く前のことで、その後に五幅(一間幅/約180㎝幅)で花嫁のれんが作られ始めて、家紋が左右に二つ入った。素材は羽二重からちりめん地へと変り始めて、「おしどり柄」とか、「松に鶴」、「尉と姥(じょうとうば)」などの模様が一般的な花嫁のれんとなりはじめたのです。

兼六園の模様を描いた花嫁ののれんが登場したのもこの頃だったと記憶しています。

 

なので持ち込まれた花嫁のれんは50年以上前のもので、所々にカビが出始めているのが汚れになっておまして、それを取り除いて欲しいとの相談でした。

 

 

【海老を描いた中包み】

 

 

 

 

中包み「海老」

中包み「海老」

 

そして驚きがあったのはこちらの中包みで、包み袱紗とも呼ばれるものですが、「海老」の模様を始めて目にしたからです。

 

一般的には「松に鶴」とか「おしどり」が多く、「宝船」もあったりして、お目出度い模様をのれんや中包みの模様に活かしたものですが、昔は「海老」も模様の一つにあったのだと始めて知りました。

 

 

【加賀袱紗/日の出に鶴亀】

 

 

 

 

加賀大袱紗(亀房付き)

加賀大袱紗「鶴亀に日の出)(亀房付き)

 

こちらはお重箱の上に乗せる「加賀袱紗」というもので、模様は「日の出に鶴亀」になります。

加賀袱紗には大きさが2種類ありまして、お重箱に蓋の大きさに合わせたものを「小袱紗」といい、その4倍の大きさを「大袱紗」と呼んでいます。

 

この模様の裏側の中央には金糸で刺繍された大きな家紋が一つ入れてありまして、家紋を入れて袱紗として仕立てる時に四方に亀房というものを取り付けていました。

 

お客様はこちらの大袱紗をお正月などに飾り物として使えるようにならないかとの相談をいただきまして、以前にも、他のお客様から相談をいただいたりしていましたが、お金がかかってもいいからアイディアが欲しいとのことでお預かりさせていただきました。

 

これらの品々は石川県特有の婚礼道具となるもので、私がこの業界に入った頃は、ご結婚が決ると、これらの道具をどうしたものかと呉服店さんに相談が入ったものです。

 

特に旧家となる先は立派なご支度をされたもので、お客様のお母様は立派な婚礼支度をされたのではないでしょうか。

 

昔は今ほど豊かではなかったように思えるのですが、婚約が決ると花嫁の方では婚礼支度が始めり、着物や生活が始めるお二人の布団や客布団、箪笥や電化製品に至るまで花嫁側が揃えていました。

 

その時代を経験された当時の花嫁さんは、「何処にそんなお金があったのかと思えるほど準備をしてくれていて、母親の真似はできない」と、話をされる方が何人もいて、ブライダル産業に支えられていたことを物語っています。

いい時代でした。

 

このような文化も廃れていくのかと思うと寂しくなりますが、これが時代の流れと言うものなのでしょうか。

 

それでは今日はこれにて・・・
お休みなさい。

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