私の仕事は、主に和装に関した商品の販売となりますが、着物需要が伸びているとは云いにくいところがありまして、経営する側としては難しい時代を迎えております。
私がきもの業界に入った頃は(50年近く前のいこと)、花嫁道具として一通りの着物を用意した時代で、娘さんがいらっしゃる先のお客様に、流行に左右されない「色無地」や「喪服」を積極的にお勧めさせていただいたものです。
当時のセールストークは「流行がない」、「記事が年々値上がりをしている」「お洒落でないのでお母さんの判断で決める方が多い」、みたいな話をして、安心できる品であることを伝えてお求めいただいたものです。
今から思うと着物がよく売れた時代でした。
その頃の時代に敵対意識を持っていたのは、貸衣装屋さんで振袖商戦の頃になると、貸衣装屋さんの振袖レンタルというサービスが邪魔で、新しく誂える振袖と貸衣装屋さんの振袖の違いをお伝えしつつも買い物に繋がる販売方法をいろいろ考えたものです。
当時は呉服店さんも多くありましたし、活気ある時代だったことが思い出されます。
それがバブル経済の崩壊(1990年頃)で業界は一気に勢いを失い、婚礼に対して無駄を省こうする意識が広がり始めると、これまで売れていた物が売れなくなっていって、ブライダル産業に頼っていた呉服店が次々と姿を消していった時代でした。
確かその頃から、タンス眠っている着物を引き取る業者が現われて、それを格安のお値段で販売するという「古着屋さん」が現われたんですね~
その市場はまたたく間に全国広がり、時を同じくして観光地などで着物レンタル業が日の出も勢いで増え始めて、空前の着物ブームと云えるまでに着物を着て楽しむというライフスタイルが目に付くようになり、地域の呉服店が潤っているかのように見えていたかもしれないが、現状はまったく逆で、新しい着物が売れないという悩ましい現実に呉服店さんが減少していったのです。
そして忌まわしいコロナ禍が3年近く続いたことで、きもの業界は市場を小さくしていって、きもの専門店と言える店が少なくなっているのではないでしょうか。
それは着物難民の増加に繋がっていて、残された全国の呉服店は、何処かで店作りの在り方をリセットしないと、着物初心者に寄り添っていけないのではないでしょうか?
特に地方の郊外で実店舗を持っている店は、「着物のことなら何でも相談してください!」みたいな姿勢で店作りをして行くことが大切で、その積み重ねが信頼に繋がっていくのではないでしょうか?
店作りをしていく中で一つの壁にぶち当るのが、店の活性化をどうして図って行ったらいいかと云うことです。
私の中では新規のお客様の件数と比例していくのではないかと考えています。
馴染みのお客様との繋がりは、着物へのきこなしをマニアック化していって、見立ての醍醐味がありますが、限りなくその関係性が続くものではなりません。
着物は食品のように消化してなくなるものではないからです。
片方で着物初心者との出会いを増やして行くことが店の活性化に繋がると考えていて、そのお客様からの目線で着物への新しい価値観を教えていただけることがあります。
それはとても新鮮で、忘れていたことを思い出されていただく機会でもあります。
今年の夏頃から出会いをいただいたお客様がいらっしゃいまして、自分で着物が着れるようになりたいと着付教室にもお越しなっている方がいます。
そのお客様はご結婚をさせてるときにお母様が準備してくれて着物をとても大切にしていらっしゃいまして、タンスにある着物を何度かに分けて店に持ってきて、「この着物まだ着られるかしら・・・?」と相談をいただくのですが、どれもが派手で、その中で有効に活かせる着物がピンク系の色無地だったのです。
保存状態も良好で、色無地の染替えをお勧めすると、「そんなことができるの?」と意外な発見があったみたいでした。
濃い色に染替えをするのであれば、現在のピンク地に深い色を重なるという染方があります。
お客様には優しい色合いが似合うように思えたもので、今のピンクの色を抜くことで白生地の状態に戻すことができるので、お好みの色に染め変えすることができます。
そんな話をさせていただくと、染替えする段取りへと話が進み、お客様な望む色で染替えをさせていただくこととなりました。
そして昨日染替えをした色無地が店に届きましてね~
【色無地を染替えしたお客様】

その色無地がこちらになります。
ピンクの色が爽やかなブルー系の入りへと姿を変えて店に届いたのを見て、想像していた以上に素敵な色無地となりました。
本体の色無地は花模様の地紋が浮かび上がり、八掛は紗綾形(さやがた)という地紋が入っていて、とても素敵だと思いませんか?
家紋を入れずに染めたので、こちらに色無地に白地が銀地の袋帯を締めていただけたらセミフォーマルの装いとなります。
普段に着こなしたいと思ったら、ワンポイント柄の染帯を合せていただけたらカジュアルな着こなしになることでしょう。
お客様に染上がった色無地を確認していただきたくて、お電話を入れると、すぐに見にきてくださいましてお客様も大満足。
お戻りになってから、もっと多くに人に、派手になったピンクの色無地を年齢に合った色に染替えできることを知ってもらいたいと思うところがあり、お客様に電話して染上がった色無地に画像を使わせていただくこととしました。
とてもリーズナブルなお値段で染替えができますので、興味をお持ちでしたら店まで連絡ください。
長い記事となりましたが、今日の記事とさせていただきます。
ではこれにて・・・
お休みなさい。