着物相談「タンスの中の着物を有効利用したい」と持ち込まれたお客様

♥ 今日も忙しい日で、一日中しゃべり続けていやような気が致します。

いろんなことが通り過ぎて行ったわけですが、先ほどお戻りになられたお客様の着物相談のことを書いてみようかと思います。

そのお客様とは二年近く前になるでしょうか、着付け教室がご縁で店に来られるようになった方で、母の着物を自分の着物として生かさるかを見て欲しいと言って10数枚の着物や帯をお持ちになられました。

その中にはお嫁入り道具として作られた着物も何枚かあり、一つ一つどのような種類の着物であるか、そして手を加えたら着れるものなのかを点検させていただいたのですが、汚れやカビが広がり使えないものや、着物の身丈が短かったり、ご本人の年齢に合わない着物や帯だっりして、有効利用できるものは1・2点しかありませんでした。

そのお客様は私とよく似た年齢の方で、お母様が嫁入り支度をしていたころに、私はこの業界で着物を必死に売り込んでいた時代で、同業者との競争意識もあって何でも口八丁で着物を押し込んでいた頃です。

当然のことながら婚礼前のお嬢様がいれば何件もの呉服店さんの出入りがあった時代で、いろんな店から着物を買っていた活気ある時代だったように思います。

持ち込まれた着物は、そのことを裏付けるかのように、さまざまな呉服店さんのたとう紙(文庫紙)に包まれて、その当時に買い求めた着物や帯ではないかと思われるものが少なくありませんでした。

懐かしく思うのと同時に、コーディネートもアバウトであったことを思い返すものでしたが、お客様はハッキリ言って欲しいと望まれていたこともあって、その当時の業界の背景や、生かせる着物が数点しかないことをお伝えさせていただいた次第です。

今にして思えば、お客様の立場になって見立てをしていたとは思いにくいところがあって、買い物を無駄にさせてしまったところがあるのではないでしょうか?

真摯にお客様と向き合っていた呉服店さんもいらっしゃったと思いますが、そのツケが私たちの業界に跳ね返ってきていているとしたら素直に反省しなくてはなりません。

お客様は宝の持ち腐れになってしまったことを悔やんでいらっしゃいましたが、振り返る時間をいただけたことに感謝したいと思っております。

その後、お客様と着物談議や世間話で時が過ぎるのを忘れて話し込んでしまいましたが、お見送りをさせていただいた東の空には大きな月が穏やかに見守っていてくれました。

他にも心を掻き立てる出来事がありましたが、これにて閉店とさせていただきます。

では、お休みなさい。