遠いところから尋ねてこられた仕立士さんとの出逢い

 古いお客様やここ数年で親しくなったお客様が時間帯を分けてお越しになられた日で、いろんなお話をさせていただくこととなった有意義な一日でした。

お客様の出入りが多いと自然の元気が出てくるもので、或るお客様とは閉店時間を忘れて着物談議に盛り上がりましたが、こうした関係性がたまらなく好きです。

DSC_0010otafukusann.JPGある意味で忙しかったわけですが、今日は印象に残った出来事を記事にしたいと思います。

その話の始まりは15日・日曜日の朝のことでした。

或る女性の方から電話が入りました。

「着物の仕立てをしている者ですが、和裁士が足りていないようでしたら、仕立物をさえていただくことはできないでしょうか?」

確かそのような内容の電話だったように思います。

お住いを聞かせていただくと能登方面の方で、車で1時間以上かかる土地にお住いの方でした。

仕立物を出すには余りにも距離が離れ過ぎていて、それに、仕立士が不足しているわけでもなかったもので、無理があることを伝え、近隣の呉服店を紹介し、そちらで尋ねてみられることをお勧めしてお断りをさせていただいのです。

40代後半の方で、和裁士一級の資格を持って細々と続くて来られたみたいで、近年、仕事がなくなり、ネットで私の店の存在を知って電話を入れたとおっしゃっていました。

私としては少し有り難く思うところがありましたが、ご縁のありませんでした。

そして昨日のことです。

ご来店になられていたお客様を見送りに外に出ると、ウインドーを眺めている女性が一人いらっしゃいまして、挨拶を交わすと、日曜日に仕立物のことで電話を入れてくれた人だったんですね~

これには驚きました。

店内にお入りいただいてお話を聞いてみると、

「ブログを毎日書いていらっしゃるんですね~ 過去の記事を読み返しているうちにお会いしたくなって来てしまいました!!
まだ途中までしか読んでいませんが、奥様を亡くされたそうで、石川県には珍しいセンスの呉服店さんに心打たれるものがあります。」

そのような話を投げかけられると、悪い気持ちは致しません。
むしろ嬉しく思うもので、もう一度お話を聞いていただくのとにしたのです。

「和裁が好きで何があっても続けたいと思っていても、仕立士を必要としている店がみつかりません。
針を置いて新しい仕事に就くことも考えたが、これまで培ってきた技能を無駄にしたくなくて・・・
一度私の縫った着物を見ていただけませんか?」

こんなに自分の仕事に誇りを持って熱い思いでお話をされる仕立士さんに出会ったのは初めてです。

能登方面は仕事が少なくて金沢まで出て仕事に就く方が多いことを聞いています。
ハンディー背負っていることを可愛そうに思うこともあれば、着物の仕立てを取り仕切る会社が呉服店さんを回り、リーズナブルなお値段で海外で仕立てをしていることも噂で聞くことがあります。

そんな歪んだ仕組みを知るたびに、豊かになった社会でありながも弱者に厳しい社会あることを見知らね顔をして生きている自分に寂しさを感じていましてね~

何かが間違っていると思っていても身を守ることに必死で、昨今の世の中の社会問題を他人事のように視ていました。


そんな時に目の前に現れた弱者的な存在の仕立て屋さんでした。

私は仕立士さんに、

「遠い距離を苦には思わないのですか?仮に店の仕立物を出すとしても途切れることがあるかもしれませんが、それでもかまわないのですか?お仕立て代もそんなに多く支払えないかもしれませんが、それでも仕立物をしていただけるのですか?」

仕立士さんには面白くない話だったかもしれませんが、受け入れてくださったもので、一組仕立物をお出しすることにしました。

内心は、これまでお世話になっている仕立て屋さんにも仕事が途切れることがあり、新しい仕立て屋さんを受け入れることにはとても抵抗がありました。

しかし着物に対する想いは私と似ていて共感できるところもあり、年齢も若く、これからの仕立て屋さんです。
この資源を絶やしてしまっては業界にとっては大きな損出となることでしょう。

私自身の心の綱引きがありましたが、要するに私が多く着物を販売すれば物事は丸く収まる訳で、ここは自分の戒めとして経営改善に向けてチャレンジしてみることにしたのです。
(根拠もないことを唱えている自分が滑稽に思えました・・・)

何が正しいのか判りませんが、「川上から川下まで気持ちよく仕事ができる環境を少しでも整えることができたなら・・・」と、考えれば素敵な出逢いだったのかもしれませんね。


心の動きを正確に記事にすることができず、また、読みにくい作文になったかと思いますが今日はこれにて終了とさせてください。

ではこれにて・・・
お休みなさい。

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