「きもの専門店で何ぞや・・・?」。そのことを自分に問いかけたときに、商品の価値やおしゃれなコーディネートをお客様に伝えることではないかと思えるものがあります。
「どのような技法で作られた物なのか?」「その価値に合った価格なのか?」そして、その商品を輝かせるためには「どのような組み合わせをしたらいいのか?」
加えてお客様は、ご自身に似合うものなのかを総合的に判断した上で、価値を生み出せるものであればお買い物に繋がりますし、何か引っかかりがあれば見送りとなるのが、一般的な専門店さんとの関係ではないでしょうか?
しかし昨今は、いろんな技法で安価な価格帯のものが物が作られるようになり、伝統的な技法や品質の良し悪しが判断できなくなっているのが、今の現状かと感じています。
その中で、安心をお伝えすることの難しさがあるのではないでしょうか?
前置きが随分難しい話になってしまいましたが、今回の出張で伝統工芸刺繍作家として活躍していらっしゃる「森康次(もりやすじ)」さんと初めてお会いしてまいりました。
上賀茂神社の近くにアトリエを構えていらっしゃいまして、その仕事場に押しかけた訳ですが、その作品たるや私好みの刺しゅうされた着物や帯を製作されていて、私としては是非との春の卯月展にて紹介してみたいと思えるものがありました。
仕事をしている様子や、幾つかの作品を紹介してみたかったのですが、映像を差し控えて欲しいとのことでしたので、縫い糸が収納された棚の前で森さんとご一緒に並んで撮った写真をアップさせていただきました。
この棚の中には、色別に分けられた絹糸が所狭しと詰まっていて、一つの引き出しには、同系色の糸を濃度順に並べて模様に合った糸を選択しながら手刺しゅうで作品作りをしていらっしゃいます。
そのことを踏まえて、森さんの作品をどのような形でお客様にお伝えすることができるのでしょう。
その日本工芸会正会員の技を、その魅力を、そのセンスを、その価値を・・・
私にできるのでしょうか?
迷うものがありますが、踏み出してみたいと思いつつ帰りの徒の付いた私でした。
それではこれにて・・・
お休みなさい。