今日は親しいお客様の息子さんのご結納の日で、開店前に店で着付けをさせていただいたのですが、着付けを終えると、いつもと違う日を迎える特別な一日であることを自覚できて心も引き締まることを話されていましてね~
いくらかでもお役に立つことができて良かったと思っていますが、特別な日を着物で迎えようとするお母さんの心遣いが伝わってきて、着物が持つ「日本人の心の美」を感じた次第です。
その後、店には絶え間なく入れ替わり人が来ていて忙しくしていましたが、今日も新しいお客様が着物のメンテナンスのことで相談にいらっしゃいました。
ご用件をお聞かせいただいた後に、北海道から引っ越してきて、この店の前を何度も通っていても、知らない店なのでなかなか寄ることができなかったことを話されていました。
快く相談を受けてくれたことをとても喜んでいらっしゃって、これで安心して着物が着れそうだと、笑みを浮かべていらっしゃいましたが、新規でお越しになられる方は誰もが敷居が高いことを話されます。
そんな中でもこうして尋ねていただけることに感謝しなくてはなりませんが、どれだけ努力しても「気軽さ」を衆知できないもどかしさに、呉服店の宿命を感じさせられています。
そして、そのことを裏付けるお話がお越しになられた店の常連さんから聞かされました。
その方は、昨日、市内の会館で着物の売り出しをしていた開場を覗かれたとかで、その主催者は県外から来ている業者さんみたいです。
この地域にも折込が入っていましたが、そのチラシを見て興味を持たれたのでしょう。
その戦略は、和装小物を破格値で打つ出していて、それを誘い水に着物を販売するというやり方で、これまでに耳にタコができるくらい聞かされてきて商法です。
会場内を見て回ると、昨年私の店から求めていただいた小千谷縮と同じ品の男物が並んでいたそうです。
販売価格を見たら驚く値段が付いていて、女物の価格を尋ねると少しお安いことを言われたそうですが、それでも買われた値段の2倍の値段に驚愕されたとか・・・
そのことを話すと、良心的な店であることを聞かされたそうです。
他にも、50数万円品の着物を勧められたそうで、それを拒むと、お渡し価格がしだいに下がっていって、最後は20万円近くまでになって、その会場を出るのに怖さを感じらせたみたいで、そのことを私に伝えたくて店に寄ってくれたみたいでした。
そのお客様には、私の店は少しでもお安く販売できるように努力をしていて、駆け引きをするようなことは一切していないことをお伝えさせていただきましたが、このような信頼を失う体験が呉服店を遠ざける理由の一つになっているだけに悲しくなります。
地域に根差す店としてお客様に不愉快な思いを与えることがあってはなりませんが、時として間違いを起こすこともあります。
それでも、誠実にお客様と向き合いたいと努力する店がいて、一方で、着物をお金儲けの手段に考えている店が存在しているのも現実で、その見分け方が判らないのが着物初心者の目線です。
その意味でも、信頼と安心をいただくことの難しさや、品質やセンスの違いをご理解いただくことのハードルの高さに苦慮させられますが、急がずに、出会いをいただいた一人ひとりに誠実に対応していくしかないのでしょう。
他にも話題にしたい出来事が3件あり、考えさせられることの多かった一日でした。
それではこれにて・・・
お休みなさい。