和装業界で作られている数多い商品の中から、商品を絞り込んで開く展示会を半年に一度企画しています。
それが4月の「卯月展」と10月の「神無月展」です。
その展示会に向けて何を採りあげればいいを、常にアンテナを上げて仕事をしている訳ですが、4月に開く卯月展の特集が決まったこともありまして、今日はそのことについて記事を書かせていただきたいと思います。
今回と卯月展で紹介させていただくのは西陣織の着物です。
そこで”御召”について少し語らせて下さい・
西陣織といえば袋帯や名古屋帯が代名詞になっていて「帯」の産地としてとても有名ですが、織物の着物として西陣で作られているのが「御召(おめし)」です。
この名称は徳川11代将軍、家斉(いえなり)公が好んで着装され、身分の高い人がお召しになったことから織物の名前になったと伝えられている着物です。
御召には多くの種類がありますが、強撚糸を使って織られ、布面にシボを表した”御召ちりめん”が代表といえます。
シボが縮んで出来るシワのようなものなので、その地風から、布面の滑らないタイプとシボ立ちもあるタイプの二種類に大きく分けられます。
布面のなめらかなタイプは、見た目にもよそゆき風の感じがあり、訪問着調のものも作られていまして、色柄によって、お茶会、パーティ、いろんな集まりなどに、晴着や社交着として装うことができます。
一方、シボのあるタイプはカジュアルな雰囲気があり、塩沢御召とも呼ばれている本場塩沢、白鷹(したたか)御召などは、こちらのタイプになります。
カジュアルといっても、紬の着物よりもソフトな雰囲気があり、絹糸と紬糸の違いや織り上がりの風合いの違いが、着物の持ち味の差となっているものです。
御召について言葉でしか表現できないことを心苦しく思いますが、御召の数少ない作家さんに曽根武勇(そねぶゆう)氏がおられます。味のある手のこんだ様々な御召を手織されている方です。
その曽根氏の作品は、これまでに着物雑誌に幾度となく紹介されておりますが、曽根氏の御召に興味を持った私は、今年の一月に京都でお会いできる機会をいただきましてね~
今年て73歳になられる方で、現在も現場でご活躍されていまして、その作品を目にしたときに、これまで私が目にしてきた御召とはまったく違うもであったことに驚きがありました。
それから数か月、曽根氏が手掛けた御召を店で紹介できないものかと仕入先と相談を重ね、晴れて卯月展の場で発表させていただく運びとなったものです。
西陣では機屋の外で音を聞けば手織か力織機(動力で運転する織機)、又は高速織機かが判断できるそうです。
手織はパッシャン・パッシャンの機音で、力織機はガシャン・カシャンです。高速織機はジェット・ルームと呼ばれ、杼(ひ)を使わずに、水と空気の力で緯糸(よこいと)送られることから、一度づつの筬打ち(おさうち)の音が聞こえず、ただブーという音だけが聞こえます。
勿論、曽根氏が織られる機の音はパッシャン・パッシャンで、その御召の仕上がりは格別のものと言えるでしょう。
いろいろ御召にまつわる話をしてまいりましたが、卯月展で曽根氏の御召を採り上げることが決まりまして、急いで案内状を作らなくてはなりません。
数日前から作り始めたところですが、私の作る案内状は手書きなもので、白紙の紙にどのようにして曽根氏の御召を伝えることができるのかと、頭を悩ませているところです。
筆を止めれば、時間ばかりが過ぎるし、4月20(金)からの開催まで残された日が少なくなっていて焦り始めています。
御召展の開催までにはいくつものハードルがありますが、素敵な着物をお伝えしたいと思う気持ちを強く持って、白紙の紙に言葉を埋めたいと思っているところです。
これではこれにて・・・
お休みなさい。