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黙々と展示会の会場作り、しかし、一人だと気持ちがだらけてしまって休憩ばかり。
内容が伴わない一日だったかもしれません。
そんな午後の時間でした。
馴染みのお客様が遊びに来ていて、ソファーに座って世間話をしていた時のことです。
入口が開く音がして、お客様だと思い「いらっしゃいませ」の声をかけるやいなや、凄い形相をした若い女性が無言で私たちのもとへ近づいてくるのです。
足元を見れば裸足で、口には不織布のピンクのマスク。
瞬間にお客様ではないことが判り、何かが起きようとしている予感を感じました。
その時は知恵遅れの女性が入って来たのかと思ったのですが、どうも様子が可笑しい。
すると、「助けてください、今まで監禁されていて、すきを視て逃げて来たんです。身を隠す場所がありませんか」と言い、私たちの間に座ったのです。
それも二日間に渉って監禁されていたことを話していて、とても脅えている様子。
信じられない話ですが、まずは先に警察だと考え、彼女に電話をするように話をすると、相手にしてくれなかったというのです。
ならば、自宅に電話をすることを薦めると、追いかけて来て殺されるかもしれないと言って、逃げ場がないことを話すのです。
私もお客様も、穏やかでない様子に唖然とさせられました。
どうすればいいのだろう・・・
頭で考えながら いろいろ尋ねるのですが、つじつまが合わないというか、会話にならないのです。
白っぽい半袖Tシャツに首には白いタオルを巻き、紫色の膝下までのジャージパンツを履いていて、年齢を尋ねれば22歳と言っていました。
持ち物と言えば、右手に携帯電話を開いた状態で持っていましたが、それも充電切れみたいで、しきりに電話を貸して欲しい、そしてタクシーを呼んで欲しいと訴えるばかり。
タクシーで何処に行くのと尋ねると、彼氏の家というのです。
無一文で彼氏が留守だったらどうするの・・・
何を話しても聞く耳を持ってくれないし、全てが常識外で捉えどころがありません。
仕方なく彼女の言うがままに、電話を渡しタクシー呼ぶと、すぐにタクシーが店の前に停まりました。
彼女に伝えると、素足でタクシーに乗り込んで姿を消して行きました。
タクシードライバーも、私の店で何が起きていたのか不思議に思ったことでしょう・・・。
何を信じたらいいのか判らないまま、時間にして5・6分の出来事だったと思いますが、もしも彼女の話が事実ならば事件です。
私たちにはあり得ない話に気が動転してしてしまって、正しい判断が出来なかったのではないか・・・
後味の悪い訪問者に考えさせられています。
(サスペンスドラマならここから意外な展開へと広がるのかもしれせんね。)
居合わせたお客様と交わしたか会話を振り返りながら、検証をしたりしましたが、とのかく驚かされました。
何もない平和な時間に事件が起きるとするなら、それは身体に異物が入ってくるかのように突然身に降りかかるのかもしれない。
そして偶然という、見えない力が働いている・・・。
私はあの場面で、そんな空気を感じました。
不思議な出来事を振り返り、あの彼女のその後を気にかけている私です。
そんなこともあって、中途半端な一日にしてしまったことを反省しています。
それでは明日またお会いいたしましょう・・・。