司君、いっちゃん。今日と日を迎えられることができて、本当によかったですね。
お母さんもこの日が来ることをどれだけ待ちこがれていたことか・・・
きっと遠くから二人の門出を喜んでいることでしょう。
現在、二人は感激の渦の中にいると思いますが、この感激を自分たちの宝とし、新しい扉を開いてください。
人生に先輩として、伝えておきたいことがあるので少し耳を貸してください。
これまで二人は、まったく違う環境で育ち、出会いがあって夫婦となりました。
性格も違えば、生き方も将来の価値観も違うことでしょう。
その二人が心を一つにして、支え合い、豊かな家庭を築き続けることって、とっても難しいことです。
何故なら、人生には辛いことがいっぱい潜んでいて、「どうしてこうなるのだろう?」と、心を痛める出来事が数多く待ち構えているからです。
それだけに、コミュニケーションを大切にし、笑顔を絶やさず、互いを敬い、そして、感謝する気持ちを忘れないでください。
その一つ一つが「幸せ貯金」で、二人の愛を育てる力になることでしょう。
この幸せ貯金は夫婦間の掟だと思って、続けて行ってくださいね・・・
必ずや、障害を乗り越えて行けるに違いありません。
一家の主となった司君。
娘は貴方に人生を託しました。
その事を真摯に受け止め、どんなことが起きようとも娘を守ってやってください。
そして、心の支えとなる男になってもらえることを望んでいます。
私の妻は6年前に病魔に襲われ、短い人生を閉じました。
妻には随分苦労を掛けてしまいましたが、目の前からいなくなってから気づいたことがあります。
「それは、妻と私が想い描く幸せの形」です。
小さな店を持っていることもあって、私は安定した生活が幸せの形だと思っていました。妻も私を支えてくれましたが、もしかしたら彼女は、「心が満たされた生活」を、なによりも望んでいたように思うところがあります。
ここに男と女の本質的な違いがあるのではないかと、気づかされています。
司君、些細なことで夫婦喧嘩をすることがあった時は、私のこの言葉を思い出してください。
「女性は幾つになっても満たされた愛情が欲しいのだと・・・」
そして、いっちゃん。貴女には語り尽くせない感謝の気持ちでいっぱいです。
我が家の長女として、小学校の先生として、お母さんを亡くした時からは主婦として、店の手伝いもしてくれて、私にとって影響力の大きい存在でした。
お母さんが病気が判った時、仕事を休職をし、毎日献身的に寄り添っていたのはいっちゃん、貴女でした。
お母さんがいなくなって、必死になって我が家の船のオールを握り締めて、前を漕いでいたのも貴女でした。
店のことを心配して、マスコミにテレビ取材をお願いしてくれたのもいっちゃん。貴女でした。
毎日仕事に明け暮れる私を、遊びに連れ出してくれたのも貴女でした。
お母さんと歩んで来た人生の後を、貴女は、お母さんに成り代わり、家庭の生活を見事に埋めてくれました。
お父さんはそんな娘に出会えたことを誇りに思っています。
「これまで、貴女の持っている時間を奪ってしまってゴメンね。」
「貴女の優しさと笑顔にどれだけ勇気をもらったことか・・・」
「なのに、何もしてあげられなくてゴメンね。」
これからは二人の時間と人生を大切にしてください。
M家の家族の一員として、お父さんやお母さん、そして司君の兄弟に愛される女性になれるよう、努力を惜しまないでくださいね。
貴女の「いつか」という名前は、いつか必ず夢を手にすることができるという意味を込めて名付けた名前です。
貴女が持つ優しさと笑顔には、人生を切り拓く力を持っていると、お父さんは信じています。
これから先、平凡な日々が待っていますが、何があろうとも、お母さんが叶えられなかった幸せを手にしてください。
司君、後はあなたにまかされから、頼んだぞ・・・