単衣用の「加賀友禅附下」から視えてくる着物業界

 毎日のように県外からの商品の問い合わせが入り、その対応に追われています。
先月の卯月展にてお世話になったお客様のご相談が後回しになっていることを心苦しく感じていますが、今日もある方からのご相談があり、記事として取り上げてみることに致しました。
ご相談者は東海地区の方で、以前にブログで取り上げた単衣用の加賀友禅附下をご覧になられて、よく似た附下を探しているとのことでした。
そのことを受けて、これから紹介したいと考えていますが、お客様が目にされた単衣用の素材は、単衣用の訪問着に使われて、附下の生地では使われていません。
お時間があれば、目に触れられた品と同じものを描いていただくことも可能ですが、急いでいらっしゃるとのことで、他の品を紹介させていただくこととなりました。
皆さんもご一緒にご覧ください。
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まず最初に、男性の作家さんが描かれた「龍ラン」柄の附下です。

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ベースの色は淡い紫で、裾が濃淡のボカシになっています。
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上前の画像を大きくしたもので、エレガンスな香りを漂わせて附下です。
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こちらは女流作家さんの「アガパンサス」の柄になります。
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地色は白茶色であっさりした模様に附下です。
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この画像が上前の柄になります。
ボリュウムのある模様ではありませんが、それが返って着物の詫び寂びを感じていただけるのではないかと思っております。
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そして、龍ランを描かれた人と同じ作家さんで、「笹に流水」の柄になります。
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地色は紫系統の濃い色がベースとなっていて、模様がハッキリ浮かび上がる附下です。
この3点は袷の着物としてもお召しになれる、加賀友禅の着物としては最も多く使われている生地になります。
単衣用としても対応できる素材です。
3点とも20万円代の附下になりますが、お客様のお好みに沿う品であるかが心配です。
加賀友禅は私の地元が産地で、お客様からの問いかけに単衣用の生地の附下を探してみたのですが、どこのメーカーさんも作っていなくてね~
品揃えに片寄りがあることを知ることとなりました。
加賀友禅の産地として、袷の訪問着に依存し過ぎていいのかと、考えさせられる部分がありますが、これが現在の着物業界と言えるのかもしれません。
これまであったものが姿を消していくという悪循環を止まることができないことに、もどかしさを感じています。
一方で、消費者はお手ごろ感のある着物を探していて、商品の質や柄のこだわりを持ち続けられない売り手側の事情があります。
このギャップをどのようにして埋めていくかが、小売店さんの課題かと考えていますが、現実は情熱や夢を失っていることを認めざる負えません。
難しい問題を置き去りにして必死にもがく着物業界がここにあります。
あるお客様の着物相談から隙間商品が浮き彫りになりましたが、私たち専門店さんが力を持たなくてはいけませんね。
それでは今日はこれにて・・・
お休みなさい。