坂口工房で染められた「加賀染め綿絽浴衣」を夏着物としてコーディネート

麻ハ寸名古屋帯/枝に留めるトンボ柄

【昨今のゆかた事情】

 

半世紀近く着物業界で仕事をさせていただいていますが、私が始めてこの仕事に付いた頃のゆかたといえば、紺地か白地の注染ゆかが主流で、たまに黒地のゆかたが入荷すると、“お洒落ゆかただ”と評価したものでした。

本来の「湯上がりに着るゆかた」としての役割を果たしていたのかもしれません。

単色のゆかたの反物がほとんどで、それをご自身の体型に合わせてお仕立てをさせていただいたものです。

 

その頃のゆかたに合わせる帯の多くは「赤や黄色」のウール素材となる単衣の無地半幅帯で合わせたものです。

たまに「ひわ色」のウール半幅帯もあったように記憶していますが、当時、ゆかたの取り扱いは呉服店とデパートに限られていて、貸衣装屋さんがゆかたを取り扱いこともなく、古着屋さんもなくて、競合店はもっぱら地域にある呉服店でした。

 

昭和の50年代は、着物を準備される方が多くいまして、夏はゆかたで冬はウールの着物といった具合に誰もが普段に着るゆかたやウールの着物を手にされた時代でした。

その後、ウール市場に陰りが見始めても、ゆかた市場は年々膨らんでいって、模様や色合も多彩になり、低価格で既製品のゆかたやゆかた帯を量販店が採り上げ始ると一気に市場が広がり始め、その市場の魅力に異業種も入り込んできて、地域の呉服店さんの存在が薄くなりはじめていったのです。

 

そして伸び続けたゆかた市場も北日本大震災で頭打ちとなった感じがして、その一方で、インターネットの普及で、その対応に遅れていた地域の呉服店さんの出番が年々少なくなっていって、2020年の始まりにコロナ感染者が日本で見つかると、一気に着物の流通と着物を着る場を失ってしまって、その状態が3年間続いたことが業界の仕組みを大きく変えてしまったのです。

 

物作りの現場から職人さんが離れて行き、経営の体力が弱くなっているメーカーや問屋さんは廃業に追い込まれ、高齢化が進む家族経営の呉服店さんも全国各地で廃業する先が増えて行きました。

 

このことによって、業界全体の体力が衰えていって、アスターコロナになった市場から、多くのゆかたブランド姿を消して、ゆかたの老舗ブランドと称される「竺仙」「三勝」「源氏物語」も職人さんが足りていないことや、物価高騰の煽りも受けていて、取り扱い先も少なくなっていることもあり、コロナ禍前の状態に戻せなくなっているのが現状です。

 

この現象はゆかた業界に限ったことではなくて、すべてのきものや帯、和装小物にもいえることで、店作りの舵取りがとても難しくなっています。

 

ゆかたの生産量が全体に少なくなっていて、地元、金沢市にある坂口工房で染められている「加賀染古代型夏衣」の生産量も少ないことから、今年は新しいゆかたの仕入先を2社増やして、ゆかた商戦に臨みたいと考えているところです。

 

その「加賀染古代型夏衣」を店では【加賀染め綿絽浴衣】と呼ばさせていただいていますが、夏着物としてコーディネートしてみたのでご覧ください。

 

 

【加賀染め綿絽浴衣を夏着物としてコーディネート】

 

 

坂口工房で染めた加賀染古代型夏衣を夏着物としてコーディネート
坂口工房で染めた加賀染古代型夏衣を夏着物としてコーディネート

 

金沢市で加賀小紋を染めていた坂口幸市氏亡き後をご子息が継いでいらっしゃって、ここでの着物コーディネートは坂口裕章が古代型を用いて染めた夏衣になります。

 

藍の色で竹を束ねて模様を染めているのだと思いますが、以前こちらの工房へお邪魔したときに数え切れない数の古い型紙を保管していらっしゃって、戦前の型紙はどのような意味合いの柄なのか分からないものがおおくありました。

 

こちらの型紙もその一つかと思っていますが、夏着物として麻八寸の名古屋帯を合わせてみました。

 

 

【麻ハ寸名古屋帯のトンボ柄】

 

 

麻ハ寸名古屋帯/枝に留めるトンボ柄
麻ハ寸名古屋帯/枝に止るトンボの柄

 

太鼓の模様は枝にトンボが止る模様を描いた麻ハ寸の名古屋帯で風情があると思いません。

着物柄が全体にあるので、白っぽい太鼓柄は着物の装いをスッキリさせるとことがあり、しかも涼しげで素敵な取り合わせかと思っています。

 

 

【アタバッグと草履下駄】

 

アタバッグに草履下駄
アタバッグに草履下駄

 

アタバッグと草履下駄で纏め哀愁をそそる取り合わせにしたつもりです。

 

 

【加賀染め足袋「風鈴と竹笹」】

 

 

加賀染め足袋「風鈴に竹笹」
加賀染め足袋「風鈴に竹笹」

 

そして季節を伝える「風鈴と竹笹」の加賀染め足袋で、お洒落な装いを演出させていただきました。

 

 

【高島クレープ長襦袢スリップ】

 

 

高島クレープ長襦袢スリップ
高島クレープ長襦袢スリップ

 

コーディネートの右端に置いていたのは、肌着と長襦袢が一体化した高島クレープの長襦袢スリップです。

胴と裾はクレープの生地で掛け合わせとなる肌着で、袖と衿は長襦袢の役割を果たしていまして、絽の半衿が取り付けてあり、えもん抜きも付いています。

袖は絽の化繊生地(ポリ100%)が胴のクレープの生地と繋がっていまし、袖丈が一尺三寸(約49㎝)となるものです。

 

今年からS寸も用意させていただきました。

 

その寸法は、(㎝の表示となります)

S寸⇒身丈【127】 裄【62】 裾廻り【135】 くりこし【3】 袖丈【49】

M寸⇒身丈【130】 裄【64】 裾廻り【135】 くりこし【3】 袖丈【49】

L寸⇒身丈【133】 裄【66】 裾廻り【145】 くりこし【3】 袖丈【49】

 

お値段は材料費の高騰で税込み価格¥6,600とさせていただきました。

 

選択がご自宅ができるので、夏小紋や夏お召、小千谷ちぢみ、紅梅小紋や奥州小紋、綿絽浴衣などを夏着物としてお召になる時に活用されることがあっても宜しいかと思っています。

 

この長襦袢スリップが数年前にネットを通して大ブレイクした商品です。

東京展に持って行くので、現品を確かめていただければと思っています。

 

どうか参考にされてください。

それではこれにて・・・
お休みなさい。

そうそう、5月4日は臨時休業させていただきます。