黒留袖に合わせる小物と比翼(ひよく)の意味・そして加賀友禅作家柿本市郎さんの黒留袖

加賀友禅黒留袖をコーディネート 着物の着こなし/コーディネート

暦と共に台風やゲリラ豪雨の話題が多くなって来ていて、静かに秋が近づいている感じが致します。

 

8月も残り少なくなり、9月の声と共に世の中のムードは秋へと加速度が増していくのでしょう。

 

その波に乗り遅れないように売り場作りを整えているところですが、秋といえば結婚シーズンでもあります。

 

お盆明けから結婚式を控えていらっしゃる方がかんざしを選びにこられていますが、一方で県外から黒留袖の装いうについて分からない点をメールで問い合わせが入ってきたりして、着物に触れることの少ない着物初心者にとっては黒留袖の着こなしが難しいようです。

 

 

そこで今日は、着物初心者向けの黒留袖の着こなしを記事にしたいと思います。

記事の最後に留袖に必要な「比翼(ひよく)」という業界の単語についても説明を加えたいと考えているので、最後までお付き合いください。

 

 

 

 

加賀友禅黒留袖をコーディネート

加賀友禅黒留袖をコーディネート

 

皆さんは黒留袖がどのような着物かご存知かと思いますが、黒地に裾模様お目出度い模様が描かれていて、袖や肩など上半身には何も模様が入っていません。

 

上半身に入っているのは家紋でけでそれも紋が五つある女性の第一礼装です。

 

画像は加賀友禅の黒留袖で、加賀友禅作家の重鎮とも言える柿本市郎さんが描かれた ”生花の図”と名付けられた作品です。

 

作風が一般的な柄と違っていて、なかなか趣のある黒留袖かと思っておりますが、この黒留袖は主に結婚式にお召しになる着物です。

 

昔はお宮参りや初産帰りと言って、赤ちゃんが生まれた時に黒留袖をお召しになられた時代がありましたが、今は結婚式の儀に新郎新婦の母親やその親族が着る着物になっているようです。

 

結婚式でお仲人さんをされる方も第一礼装の黒留袖になります。(色留袖は適当でないのでご注意ください。)

 

 

 

 

加賀友禅黒留袖と西陣袋帯

加賀友禅黒留袖と西陣袋帯

 

この2点はお仕立てをする前の商品で、袋帯は金・銀・白で織られた品が適当かと思われます。

そのさじ加減は難しいものがあり、迷うようであれば専門家である呉服店で相談されてみてください。

 

 

黒留袖は和装の第一礼装とあって、その装いにはいくつかの決まりごとがあります。

 

 

この決まりごとが理解できていない方が多いようで、確認の問い合わせをいただくことが少なくありません。

 

 

 

 

留袖の装いにふさわしい小物

留袖の装いにふさわしい小物

 

こちらの画像は黒留袖の装いうに必要な小物を並べてみたもので、少し説明を加えさせていただきます。

 

 

留袖を着るときには、まず先に汗取りの役割を果たす肌着が必要になります。(画像の左端の品)

数日前にも、黒留袖の下に長襦袢と着物スリップの両方を着用するものなのかの問い合わせがありましたが、着物スリップとは肌着のことで、今は上下に別れたものでないスリップタイプのものが主流になっています。

 

この肌着も夏用があるので、暑さを感じられる時期でしたら夏用をお使いになると、いくらか暑さをしのげるのではないでしょうか。

 

 

肌着の次に重ねるのが長襦袢になります。(映像の中央にある反物になった白い生地)

 

この長襦袢は白になります。

 

和装の世界では家紋が五つ入った黒留袖と喪服は白の長襦袢であることが決まりごとになっていて、ピンクの系の長襦袢を合わせる方もいらっしゃるようですが、それは間違いです。

 

勿論長襦袢に取り付ける半衿も白で、刺繍の半衿でもかまいませんが、その場合は白糸か金銀の糸で刺しゅうされたものをお使いください。他の色糸が入っている品はお避けてください。

 

そして帯〆帯揚げも白色で、その中に金銀が入っていたり、帯〆が金や銀の一色であってもかまいません。

とにかく白が基本で色が入った品は適当ではありません。

 

草履とバッグも白系や金銀で作られたものがふさわしいでしょう。

 

そして黒留袖の装いで忘れてならないのは末広で、それは黒塗になった扇子のことで暑さをしのぐためのものではありません。

帯に挿すもので、金銀の紙が貼られたものになります。

 

ここまでの装いが整って黒留袖の装いとなりますが、最近はかんざしをお使いになられる方が増えていまして、結婚式にふさわしいかんざしを挿されると華やかさも増すことでしょう。

 

 

さてここからが黒留袖の付いて廻る「比翼(ひよく)」について話をさせていただきます。

 

私が着物の仕事に就いたのは昭和48年のことで、戦前戦後の黒留袖の装いは、肌着、白長襦袢、白下着、そして黒留袖と4種類のものを重ね着していたそうです。

 

先輩に教えてもらった話ですが、その装いは”目出たいことが重なる”という意味を持っていて、当時は黒留袖と長襦袢の間に、白無地のちりめん地で仕立てた”下着”という品名の長着を重なていたんですね~

 

混雑な着こなし方ですが、それが当たり前だったようです。

 

それが時代と共に簡略化されて、下着を着たいるかのように見せかけた、長着の衿、裾、袖口、振りなどに下着の布を重ねて縫いつけ、二枚重ねを着たように見せる仕立て方になったんですね~

それを業界用語で比翼仕立て読んでおります。

 

この比翼の語源は二羽の鳥が互いに翼を並べているという意味だそうです。

 

 

 

 

比翼(ひよく)と白の重ね衿

比翼(ひよく)と白の重ね衿

 

なので、比翼は黒留袖をお仕立てする際に使われている生地のことで、それを用いて仕立てた仕立て方を比翼仕立て呼ぶものです。(映像の左が比翼地になります)

 

最近では少なくなりましたが、昔の黒留袖は比翼仕立てになっていなかったもので、その黒留袖を店に持ち込まれて、白の重ね衿(映像の右側)を合わせて比翼仕立てに見せかけた応急処置をさせていただいたこともありした。

 

長年この業界に身を置いているから物事の仕組みや理屈が分かりますが、日頃着物に触れたことのない方は、年を重ねていても着物のことが分からなくて当然かと思います。

 

黒留袖の装いうについて解説が多くなりましたが、少しでもお役に立つことができたとしたら嬉しいです。

 

最後までお付き合いくださいまして感謝したいです。

何か分かりにくい点があるようでしたら気軽の相談してください。

 

それではこれにて・・・
お休みなさい。

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