【店主の呟き】
昨日、加賀小紋の染師として活躍をされてる坂口幸市氏が数日前にお亡くなりになったことを耳にしましてね~
病気療養中と聞いていただけに驚きがありました。
坂口幸市氏は「二枚小地白(にまいこじしろ)」という型染めの加賀小紋がとても有名で、15年近く前の卯月の会で坂口幸市氏の加賀小紋を特集させていただいたことがあります。
その時に坂口さんにとてもお世話になったんですね~
店に加賀小紋の染めの実演をするために来てくださって、お客様と気さくに接してくださる姿に心を打たれました。
盛況に終った会であったことを記憶しています。
そのようなご縁もあって加賀染古代型夏衣を品揃えするようになった訳ですが、現実を知ることとなり、とても断念でなりません。
ご冥福をお祈り申し上げます。
きもの業界に長年身を置いて思うことは、多くの先人達の教えがあったから、迷い道に入っても自分を見失わずにこの仕事を続けてこれたのだと思います。
いつも私の回りには勇気づけてくれる人がいて、商売の“イロハ”を教えてくれた業界の先輩もいてくれて幸せ者だと思っていますが、ここ7・8年の間に、定年で業界から去って行った人や病気で命を失った人が少なくなく、人生の儚さ感じさせられています。
同時に寂しさもこみあげてまいりますが、どんなに頑張っても命を持つ者は死に近づいていくということで、歳を重ねていくと残された時間というものを考えてしまいます。
そして「今の自分に何が出来るのだろう」ということも頭をかすめます。
一方で、年齢を頭の置いて社会を視ると、考えることも行動することも小さくなってしまって、どうしても不完全燃焼的な生き方になってしまいます。
言葉の端々に「歳だから!」が付いて回って、人生を捨ててしまっているかのように思えてなりません。
だから、できる限り年齢を考えないようにしています。
むしろ、仕事でしたいことを見つけ出して、それを実行するように心がけていると、パワーが出てくるんですね~
単純かもしれないがそれでいいと思っています。
なのに、よく知る人が亡くなったことを聞くと、「生きる力」と「残された時間」が振り子のように動き出して余計なことを考えてしまいます。
こうして時々「生きる」ことを考えることは悪いことではないのかも・・・
【坂口幸市氏の加賀染絹紅梅をコーディネート】
今年1月に坂口幸市さんの最後の作品になるかもしれないと聞かされて仕入れた絹紅梅のきものが、ヤケに輝いていて、店内でディスプレーしていた作品にカメラを向けていました。
黒地の絹紅梅小紋で裂取り柄の模様に白地の博多ハ寸名古屋帯で組み合わせて、山葡萄バッグでカジュアルな装いに仕上げたものです。
もう1点店には坂口さんの絹紅梅小紋がありますが、今となれば貴重なきものになるのではないでしょうか?
それではこれにて・・・
お休みなさい。