【店主の呟き】
人の命というものは実に儚いものだ。
私がきもの業界に入って大変お世話になった人がいます。
その方が新年が明けてまもなく、85歳で亡くなったことを昨日知り動揺する自分がいました。
彼との出会いは私が21歳のときのことで、生まれ育った福井県を離れ石川県の呉服店さんに務めることとなった私に、当時務めることとなった呉服店さんの仕入先担当者で、商売のイロハを教えてくれた方です。
業界の大先輩でもあるK氏は仕事のことだけでなく、麻雀もお酒の飲むことも教えてくれましたし、私がマイホームを買うときも、二人で仕事をする振りをして一戸建て住宅を見て歩いては意見を求めるという、仕入先の担当者でありながら、友達でもあり人生の教育係でもありました。
私が石川県の地で呉服店として創業することを勧めてくれたのも彼で、現在の私がこのようにして商いが続けられているのもK氏のお陰かと思っています。
金沢の問屋さんを退職されてもしばらく交流があったものの、妻が亡くなった頃から年賀状のやりとりだけで終っていて、十数年近くお会いすることがなかったことが悔やまれてなりません。
K氏の遺影の前で、K氏と刻んだ出来事を懐かしむかのように、感謝の気持ちを奥様にお伝えしてまいりました。
どんな強靱な方であっても老いと病に勝てないという現実に、いずれ私も同じ運命を辿るのかと思うと悲しくて仕方ありません、
この世で一人の命が亡くなったとしても、身近な人でなければ、何事もなかったかのように朝起きれば仕事に出かける準備を整え、その日の仕事をこなすし、夜になればテレビから流れるバラエティー番組を見て気持ちの切り替えを図ろうとする。
そして眠りに付けば朝が来るという平凡な生活を送っています。
その一日の繰り返しは生きている時間だとしたら、人類が歴史を刻んできた時間の中では“まばたき”をするような瞬間なのかもしれません。
だとしたら、一度っきりしかない人生が良き意味で、自分と関わり持つことになった人の人生に影響力を及ぼすような生き方をしたいです。
石川県での人生を振り返ると、私の生き方に影響力を与えてくれた人は、妻とK氏の二人だったように思います。
K氏のご冥福をお祈り申し上げなす。
あの世で妻と美味しいお酒を酌み交わしながら、私の悪口を言っているかもしれませんね。
湿っぽい話を記事にしてしまいましたが、実は今日は春を感じる陽気となり、車の窓を透かして車を走らせていました。
春が近いと錯覚してしまいますが、足元が良いだけにきものでお出かけすることがあってもよろしいのでは・・・。
これからお茶会の初釜があちことで始まるのでしょうが、街着のお洒落も楽しんでみてください。
店にはそのようなお客様からマニアックな商品の注文を少しずつですがいただけるようになっていまして、嬉しく思っている次第です。
【水牛の角から作った「梅」の帯留め】
こちらは水牛の角から作らせていただいた「梅」の帯留めもで、その仕上がりに満足しております。
梅模様に螺鈿(らでん)を入れたこだわりの品で、帯留めのクオリティ高さをこの画像からも感じ取っていただけるのではないでしょうか?
季節感があって新年会などの装いに、この帯留めを活用されたらお洒落だと思いません・・・。
ことらの帯留めは関西で水牛の角から帯留めやブローチを彫る作家さんがいまして、その作家さんにお願いして作っていただいた帯留めになります。
過去には音楽に関した帯留めをオーダーメイドで彫っていただいたことがありまして、最初に作っていただきたい模様を作家さんにリクエストすると図案を書いてくださるんですね~
その図案を見て修正を加えるのですが、その時は、ギターに蓄音機を作っていただきました。
まさに世界に一つしかない帯留めとなり、店としては嬉しく思うところがありました。
皆さんも作ってみたい帯留めがあれば、作家さんにお願いして図案を書いていただくことができます。
そしてお客様のOkが出れば。貴女だけの帯留めを制作させていただきます。
ご注文をいただいたお客様は、「桜」の帯留めも作れるのかの相談もいただいていまして、他にも単衣時期に合わせて「ツバメ」が作れてら素敵かと思うところがありまして、明日にでも相談してみたいと思っている私です。
それではこれにて・・・
お休みなさい